コースの内容

�T．手紙の構成要素

１．レターヘッド（Letterhead）

発信者の名前と住所を一見して受信者にわからせるもので、社名（Firm name）、所在地（Address）、電話番号（Telephone number）、ファクス番号、電子メイルアドレス（E-mail Address）、ホームページ（Web site）などが予め印刷されている。手紙の冒頭に記載されているので、レターヘッドと言うが、レターヘッドが印刷されたレター用紙もレターヘッドと呼ばれている。

２．参照番号 (Reference Line)　 　

受発信の整理や照合のために記入する記号や番号を参照番号というが、これは、レター様式を構成する不可欠の要素ではない。ただ、参照番号があれば、お互いに参照し合うことができるので、便利である。通常、Letterhead の下の適当な位置に Your Ref. Our Ref. と印刷しておき、その空欄に番号などを記入する。

３．書中宛名 (Inside address)　 　

ビジネスレターは、封筒だけでなく用紙にも受信者の名前、会社名、所在地を書き込む習慣があるので、先方のレターヘッドの記載通りに宛名を記入する。会社名なども勝手に省略（例えば、ABC Corporation と書かれているのをABC Corp.に省略。）してはならない。

４．発信日付 (Dateline)　 　

英国式、米国式と呼ばれる２通りの書き方がある。英国式は「日(序数、基数)　月　年の順序で 20th January, 20xx」と書き、米国式は「月  日(基数)　年の順序で January 20, 20xx」と書く。

５．担当者名 (Attention Line)　 　

ビジネスレターは、企業、団体に宛てるのが原則であるが、宛先の企業や団体が大組織である場合は、その組織の特定の部署または個人に宛てる必要も生じてくる。この宛先を担当者名（Attention line 又は Particular address）という。この Attention line の位置は、Inside address と Salutation の間に置く。Attention は、Attn. 又は Att. と略されることもある。

６．冒頭礼辞 (Salutation)　 　

日本語の拝啓、謹啓、拝復などに当たる書出しの挨拶である。日本語書簡と異なり、男・女、単・複数の違いがあり、かなり複雑である。会社や団体に宛てる場合は原則として、Dear Sirs,（英国式）または Gentlemen:（米国式） 又は とし、いずれも男性複数となる。句読点は、英国式ではカンマ (,) 米国式ではコロン (:) が使われるので、注意を要するが、開放式句読法（後述の句読法を参照。）の場合は、句読点は要らない。

Inside addressの中で個人名 (Mr. Robertson)や役職名 (The Manager) など単数の宛名に出した場合は、Dear Sir（男性）、Dear Madame（女性）となるが、これは formal で冷たい印象を与えるので、姓に敬称をつけてDear Mr. Robertson / Dear Ms. Leeman などとするのが一般的である。又、名前がわからなくて、Inside address の中で役職名 (The Manager) を書いた場合は、テキストのように Dear Manager,（英国式）または Dear Manager：（米国式）とするよう推奨する。特に、最近は、欧米のビジネス界における女性の活躍が目覚しいので、相手名や相手の性別が不明の場合は、この書き方が望ましい。Inside address の宛名に個人名や役職名を出さないかぎり、ビジネスレターは企業あてと考えられるので Salutation は、複数とするのが原則であり、Attention line で個人名や役職名を出してもこの原則は変わらない。 

英国式および米国式の冒頭礼辞をまとめると、下記の通りである。

	英国式	米国式
名前、肩書が不明の場合
・相手が一人（男性）	Dear Sir,	Dear Sir:
・相手が一人（女性）	Dear Madame,	Dear Madame:
・相手が複数（男性）	Dear Sirs,	Gentlemen: 又は Dear   Sirs:
・相手が複数（女性）	Dear Mesdames,	Ladies:
・相手が男女混合	Dear Mesdames and Sirs,	Ladies and Gentlemen:
名前、肩書が分かっている場合
・相手が一人（男性）	Dear Mr. Reagan,	Dear Mr. Reagan:
・相手が一人（女性）
既婚の場合	Dear Mrs. Brown,	Dear Mrs. Brown:
未婚の場合	Dear Miss Brown,	Dear Miss Brown:
既婚／未婚が不明の場合	Dear Ms. Brown,	Dear Ms. Brown:
・相手が男性複数	Dear Mr. Harris and Mr.  Mann,   Dear Messrs. Harris and Mann,	Dear Mr. Harris and Mr. Mann:   Dear Messrs. Harris and Mann:
・相手が女性複数	Dear Ms. Reeve and Ms. Morgan,   Dear Mses. Reeve and Morgan,	Dear Ms. Reeve and Ms. Morgan:   Dear Mses. Reeve and Morgan:

７．件名 (Subject Line)　 　

レターの件名を示すもので、これがあると一見してレターの内容が何であるかが分かるので、毎日多数のレターを受発信している場合には、その処理やファイルが手早くできて便利である。Salutation の下の行に件名を簡潔に１行か多くても２行で示し、目立つように下線を引く。Subject:, re: と前置きしてもよい。

８．本文 (Message)　
 　

本文は、 Salutation の下に１行あけて書出し、Full block letter の場合は、全部の行を左のマージンにそろえ、Semi-block letter の場合は、各 paragraph の最初の行の頭を3〜6字分引っ込めて書き出す（字下げ）。字下げをインデント(Indent)という。本文中に小見出しや項目分類、表などがあるときは、Full block letter の場合でも、全ての行を左マージン揃えにこだわる必要はない。印字は、原則としてすべて Single spacing とし、Paragraph と Paragraph の間は１行あける。

９．結尾礼辞 (Complimentary Close)　 　

日本文書簡における敬具、頓首などにあたり、冒頭礼辞（Salutation）とともにレターの形式を整えるのに欠かせない要素である。ビジネスレターに多く使われるのは、Yours faithfully,（英国式）、Very truly yours,（米国式）で、米国では副詞を先に置くのが好まれる。 

儀礼の度合い毎に英国式および米国式の結尾礼辞をまとめると、下記の通りになる。

　

儀礼の度合い	英国式	米国式
丁寧で、形式的挨拶（通常の往復書簡に使用される。）	Yours faithfully,	Very truly yours,  Yours very truly,  Truly yours,  Yours truly,
親交のある場合の挨拶（通常の往復書簡に使用される。）	Yours sincerely,  Sincerely,	Sincerely yours,  Cordially yours,   Sincerely,

　　

なお、句読点は、英米いずれの場合もカンマ（,）を用いる。開放式句読法（後述の句読法を参照。） の場合は、冒頭礼辞の場合と同じようにカンマは要らない。

１０．署名欄 (Signature Block)　 　

通常、Complimentary close の下に社名・団体名（省略する場合もある）を書き、その下を数行あけて、署名者の氏名と役職名を入れる。用紙にプリンターで印字した後、その空けた部分に署名される。署名は、英字体または漢字体で行うが、いつも一定の書き方をしなければならない。 レターヘッドを使わないときは、結尾辞令と署名の間に社名（機関名）を大文字で記入する。

１１．同封物表示 (Enclosure Notation)　 　

レターと一緒に封筒に入れるものがある場合にそのことを文中に書くだけでなく、ここで改めて指示をする行である。位置は、Identification initials の下の行で左のマージンから始め、Enclosure (s), Enc(s)., Encl (s). として同封物の点数のみ記したり、又は、書類名を記したりする。ファックスや電子メールでは同封物を送ることができない。ファックスの場合は、添付書類はカバーレターに続けてファックス機械に送り込むので、電子メールの場合と同じように Attachment として添付する方法が用いられている。ファックスも電子メイルも image data が送付できるので便利である。

１２．写し送付先 (Copy Notation)　 　

同文の写しを受信者以外にも送ることがあるが、そのことを示す行である。位置は Enclosure Notation の下の行の左のマージンから始め、cc:（＝Courtesy Copy）の略語を付けて、その行き先を示す。

１３．追伸 (Postscript)　 　

本文に書き忘れたことを後から追記する行であるが、現在では、ワープロで作成するので、追記は簡単にできる。従って、書き忘れというよりむしろ故意に追伸として、受信者の注意を引くという目的で使うのが普通である。位置は、最終行の左マージンから P.S. または PS として追記する文を書く。本文署名者がイニシャルで略署名をする習慣がある。

　

�U.句読法（Punctuation）

　ビジネスレターに特有の句読法には、閉塞式、開放式、混合式の３種類がある。

１．閉塞式（Closed punctuation）

Dateline の後と Inside address, Signature の最後の行末にピリオドを打ち、これらの各行末にカンマを打つ。Salutation の後にカンマ又はコロンを打ち（カンマは英式、コロンは米式）Complimentary close の後には英米式ともカンマを打つ。

The Export Manager, 
Chiba Electronics Co Ltd, 
6-20-9 Takahama, Mihama-ku,
Chiba City 261-0003,
Japan,

Dear Manager,（英国式）　

Dear Manager:（米国式）

　

Yours faithfully,（英国式）

Very truly yours,（米国式）

ただし、これら部分の各行内のカンマや本文中の句読点、また略語のピリオドなどは英文法のルールに従うので、ビジネスレターの句読法とは関係ない。

２．開放式（Open punctuation）

英文法のルールに従い、本文中や各行内に必要な句読点や略語のピリオドを打つ以外は、各行末にいっさい句読点を入れない。

The Export Manager 
Chiba Electronics Co Ltd
6-20-9 Takahama, Mihama-ku
Chiba City 261-0003
Japan

　

Dear Manger（英国式）
Dear Manager（米国式）

　

Yours faithfully（英国式）

Very truly yours（米国式）

３．混合式（Mixed punctuation）

基本的に Open punctuation と同じであるが、Salutation と Complimentary close の後にだけ句読点を入れる。つまり Salutation の後にカンマまたはコロンを打ち（カンマは英式、コロンは米式）、Complimentary close の後にカンマを打つ。

The Export Manager 
Chiba Electronics Co Ltd
6-20-9 Takahama, Mihama-ku
Chiba City 261-0003
Japan

　

Dear Manger,（英国式）
Dear Manager:（米国式）

　

Yours faithfully,（英国式）

Very truly yours,（米国式）

　

以上３種類のうち、Closed punctuation は、かつて Indented style（各パラグラフのみならず、書中宛名、署名欄等にインデントが行われる古典的なスタイルで、現在では、使われていない。）と併用された古典的な句読法であるが、タイピングが面倒なため、次第に使われなくなった。現在、もっとも一般的な句読法は、Mixed punctuation で、このコースでもこの句読法を採用している。

�V.手紙のスタイル（Letter Formats）

　上記の各構成要素を配置する際に数種の様式（style）があり、現在普及しているのは、下記の３つのスタイルである。

１．Full Block Letter 　

レターを構成するすべての要素が左寄せされ、表や見積り等は別としてインデントは行われない。付表１（英国式）および付表２（米国式）を参照。英国式と米国式では、上記の解説のよな違いがあるが、日付の位置も異なっている。現在、Full Block Letter が一番普及しているので、このコースでもこのスタイルを採用している。

２．Modified Block Letter　 　

発信日付、結尾礼辞及び署名欄は、通常右寄せされ、結尾礼辞及び署名欄の書き始めを揃える。また、Full Block Letter と同じように、各パラグラフのインデントは行われない。

３．Semi-Block Letter　 　

発信日付、結尾礼辞及び署名欄は、通常右寄せされ、結尾礼辞及び署名欄の書き始めを揃える。ただし、各paragraphのインデントを行う。